ふれあい自然塾ひぜん
佐賀県唐津市の西部(肥前)に位置し、弊社で約20年前に設計した"ふれあい自然塾ひぜん"を
九州事務所の山口、安河内で訪れました。目的はインバウンド等でレクレーション形態が大きく変容する近未来を踏まえ、
現状の利用状況の確認をするためでした。
この地域は玄海国定公園の満越集団施設地区で、多島海の海辺や大浦棚田(棚田百選)など
美しく懐かしい景観に囲まれており、近くには"国民宿舎いろは島"が整備されています。
"ふれあい自然塾ひぜん"は、この地域の豊かな自然の中で営まれてきた人々の暮らしをテーマに、
利用者に地域の文化とのふれあい体験へいざなうための施設整備をしたものです。
そのため建物は、昔の生活体験を行うよう伝統的な民家の特徴を取り入れた意匠とし、
伝統文化体験施設を整備しました。そのほか宿泊体験としてキャンプサイト、コテージなども設けました。
メインとなるフィールドワークでは、島々で囲まれた穏やかな水域を活動の舞台にシーカヤックと桟橋を設けました。
現在はSUP(Stand Up Paddleboat)なども加わり旺盛な利用が定着したため、国民宿舎の利用客増にも寄与しているようです。
一方、地域の伝統文化体験は利用が衰退しているようで、民家を模した土間や座敷などは、
シーカヤック等の倉庫的利用がなされているような状況でした。
伝統文化体験等はおそらくきめの細かいプログラム展開が必須で、
目的が明快なシーカヤック等のアクティビティなどに比べ人気も低く、
徐々に淘汰されつつあるものと考えられます。
設計会社としては、この状況は複雑な思いですが現実として受け止めざるを得ません。
この地域は素晴らしい自然や伝統文化に恵まれた環境に立地していますが、
高齢化、人口減少地域であります。その中で何とか地域を持続させていくためには、
今後のインバウンドの波をうまくとらえていくのも一つだと考えます。
外国の人々が親しみ、長期の滞在を促す地域にするためには、地域の文化を理解することが欠かせません。
"ふれあい自然塾ひぜん"が、伝統文化体験施設を新しいニーズでよみがえらせ、
地域観光の受け皿として再生していくことを願っております。
リアス式の多島海の海
建物の全景
正面が伝統文化体験施設
シーカヤック収蔵庫
シーカヤック乗降桟橋
SUP等の収蔵スペースとなった受付カウンター
薪で炊くクド
民家風の伝統文化活動室
近隣の漁港と"大浦の棚田"