昔の作品にタイムスリップ(その1:ねいの里/富山市)
富山県自然博物園「ねいの里」を、当時計画・設計にたずさわった前澤、
藤島(TAU 設計工房)、安河内の3名で45年ぶりに訪れました。
藤島の「昔の恋人に会いたい」との思いに皆共鳴し、早速富山に集合、当日は薄曇りでしたが、
建物は45年前のシルエットのままで我々を出迎えてくれました。
大きく印象が異なっていたのは周辺の樹林でした。当時は丘陵一体がやせた雑木林で樹高も低かったのですが、
今や建物をすっぽり覆い隠すほどの森に成長していました。また、子供たちのフィールドワークに合わせ園路の
ネットワークが当初とは比較にならないほど充実したものになっていました。
初代館長から代々引き継がれてきた子供たちの興味を重視した、きめの細かな多種多様な運営、
管理の取組みに頭が下がる思いでした。
園内から館内まで丁寧なご案内をしていただいた荒屋館長他管理スタッフの方々の言葉から、
如何にこの施設を愛して下さっているか、ひしひしと感じられたことに感謝です。
建物は、自然になじみ、自然に優しい建築を目指し、当初屋根、
外壁すべてをウッドシングル(米杉こけら葺き)で覆っていましたが、さすがに木材の劣化による雨漏り対策として、
残念ながら屋根部分がガルバリウム鋼板で葺き替えられましたが、形はそのまま、外壁は残りました。
建物内部は、展示物が更新されているものの、ほぼ往時のままで、子供たちの絵、
作品や標本が所狭しとばかりに飾られていました。
中央のスロープを組み込んだ大階段は、車いすの移動もできるうえ、
多人数でのレクチャーの段状席として便利だと喜んでおられました。
この施設は世界的規模での環境問題の認識が高まり環境教育や自然保護教育の必要性が唱えられてきたころ、
日本での先駆的施設として「誰もが自然に親しみ、自然に学び、育てる」をテーマに設計したものです。
幸せなことにこの旅で、45年を経た今も生き生きと活用されている姿を確認することができました。