コラム

南西諸島が生み出す多様性-日本産トカゲモドキの場合-

(環境調査部 沖縄事務所 動物調査担当)  


 「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」は、希少な生態系と生物多様性が評価され、 2021年7月に世界自然遺産に登録されました。また、登録された地域以外の島々にも様々な生き物が生息していて中琉球、 南琉球全体が多様性に富んだ地域になっています。 例えば、沖縄島と周辺の小島に生息しているクロイワトカゲモドキのDNAと形態形質を詳細に調べたところ、 沖縄島北部と古宇利島に生息する個体群は別種であることが確認され、 2024年2月に「ヤンバルトカゲモドキ」として新種認定されるなど、まだまだ新しい発見がある地域です。
 現在、国産トカゲモドキは鹿児島県の徳之島に1種、沖縄諸島に6種生息しており、見た目も実に様々です。 例えば伊平屋島にのみ生息するイヘヤトカゲモドキは黒地に3本の薄桃色のバンドが入る一方で、 久米島にのみ生息するクメトカゲモドキは黒地に4本の明るい黄色のバンドが入り、 バンドの間にもランダムな斑紋を呈します。
 筆者の任地である沖縄事務所は沖縄県那覇市にあり、種分化を果たした近縁種を求めて島々を巡るには最適な場所です。 今回のコラムに用いたトカゲモドキの写真は全て筆者が島巡りをして撮り溜めました。
さて、ヤンバルトカゲモドキを写真に収めに、次はいつやんばるへ行こうか。

イヘヤトカゲモドキ(Goniurosaurus toyamai Grismer, Ota et Tanaka, 1994)
生息地:伊平屋島

クメトカゲモドキ(Goniurosaurus yamashinae (Okada, 1936))
生息地:久米島


マダラトカゲモドキ(Goniurosaurus orientalis (Maki, 1930))
生息地:渡名喜島

ケラマトカゲモドキ(Goniurosaurus sengokui Honda et Ota, 2017)
生息地:渡嘉敷島、阿嘉島


クロイワトカゲモドキ(Goniurosaurus kuroiwae(Namiye, 1912))
生息地:沖縄島(北部除く)、瀬底島、屋我地島、伊江島

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