コラム

だからこそ世界遺産なのだ。

(環境計画部)  


 2024年7月、インドのニューデリーで開催された第46回世界遺産委員会に参加してきました。 世界遺産委員会は、年に1回、世界の196の加盟国やNGO等が集まって、 新しい世界遺産を登録するかどうかを審議したり、今ある世界遺産の保全状況等を報告・議論する会議です。 今回の委員会で、日本の「佐渡島の金山」が新しく世界遺産となったのをニュースで目にした人も多いと思います。
 私は、普段の仕事では国内の世界自然遺産である「奄美大島・徳之島・沖縄島北部及び西表島」や「屋久島」の 保全や利用に関わる機会が多いのですが、そのような各国の遺産の保全に関わる議論を国際会議の場で聞くのは、 普段の仕事と地続きでありながら新鮮でもありました。
 特に、危機遺産(※)リストに入れるかどうかという議論の中で、「危機遺産は恥でも罰でもなく、支援の手段だ」 という言い方が盛んにされているのが印象的でした。もちろん、世界遺産は基本的には当事国が保全すべきものであり、 この発言にももしかすると建前的なところがあるかもしれませんが、会議に参加している各国代表者は多かれ少なかれ 「みんなで世界遺産を守りたい」という思いを共有しているように感じました。
 今回の委員会の議長であったシャルマ氏(インド)の次の言葉は、まさにそれを象徴するものだったと思います。

 「委員会の全代表の根底にあるのは、遺産を守ることだと断言しよう。世界遺産はどこの国にあってもおかしくないが、 全人類のものであり、だからこそ世界遺産なのだ。」

 自分の普段の仕事の中で、「世界遺産は誰のもの?」や「誰のための世界遺産?」といった問いに直面する機会もあるのですが、 この言葉を聞いて、日本の世界遺産も日本のものであり地域のものであると同時に、 世界の多くの国とその価値を共有しているものだと実感し、励まされたような気持ちになりました。

会場の様子

会議の合間にはサイドイベントが開催され、気候変動による世界遺産への影響など、最新のトピックが盛んに議論されていました。


併設のフードコートでは多種多様なインド料理が。どれも美味しく、しかし同時にお腹の痛みにも悩むことになりました…。

帰国前に立ち寄った世界遺産フマユーン廟。インドにはなんと43個もの世界遺産があります。

※危機遺産:紛争、災害、開発等の理由で重大な危機にさらされている世界遺産

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