ペンギン・ホームズ
1985年、ニュージーランドの潜水探検家Kelly Tarlton(1937~1985)は、
多くの人々がダイビングを疑似体験できるようにと、事業と自宅を抵当に資金調達し、
世界初のアクリルガラス製水槽トンネルを建設した(現Kelly Tarlton's Sea Life Aquarium)。
それから15年後、旭山動物園がアクリル水中トンネルのあるペンギン館を開設し、"空飛ぶペンギン"が
見られる施設として全世界から脚光を浴びた。更に14年後、九十九島動植物園で、夏になると何かと
話題になるサンシャイン水族館「天空のペンギン」よりも3年先駆けて、日本最大の天井水槽(約80㎡)
のあるペンギン館がオープン。設計には当社が関わった。その8年後には、福岡市動植物園で、
当社が関わった国内有数規模のペンギンエリア(1900㎡)が開設。ここでも、約50㎡の天井水槽で泳ぎ、
水深4mのプールを潜水するペンギンの様子が伺える。
国内では、フンボルトペンギンを飼育している動物園や水族館が多い。彼(女)らは温帯の鳥で、
寒さには弱い。とは言っても寒流のフンボルト海流が北上する生息環境に暮らす鳥なので暑さも苦手。
そのため夏に暑くなる地方の施設はミスト装置を設置したり、木陰を多くしたりと、その対策に怠りはない。
彼(女)らは繁殖期には、営巣場所まで草地や岩場を歩く。非繁殖期は岩場など上がって、微睡(まどろ)む。
生息地の地表面とは異質な平坦なコンクリート床で飼育されているペンギンは、足の裏全体にかかる
荷重のために血流が悪くなり趾瘤症になりやすい。これが原因で、細菌感染症を引き起こし、
命を落とすこともある。このためその様な古い施設でも、飼育員は玉石を設置したり、人工芝を敷くなどして、
なるべく自然に似せた条件を作り出すなど、最大限の予防に努めている。当然、施設リニューアルに際しては、
人を惹きつけるインパクトある展示や野生本来に近い行動・生態の発現のためだけでなく、
趾瘤症等の疾病予防や体調管理も目的に飼育環境を整備する。
さて、以上の様なちょっとしたウンチクにも関心を持ち動物園を訪れたならば、
きっと新たな発見ができるだろう。さぁ、飼育施設の片隅にも目を向けてみよう。そこには、
何らかの理由でひっそりと据えられている何かがあるかもしれない。動物園ミステリー探偵となって、
その理由を推理するのも面白い。
九十九島動植物園
福岡市動植物園